この文章は、釣り雑誌「つり人」より、「潮の動きについての文章を書いてくれ」と依頼を受けて作成した文章です。
 記載してある文章は、雑誌に掲載された時の文章より多少わかりやすく手直ししてあります。

 私はサラリーマンから1本釣りの漁師に転職した釣りキチガイです。

 潮の動きの重要性に付いては、川や海での釣りをはじめた当初から理解しておりましたが、漁師として生活してみると潮が動かない条件でも問題無く魚が釣れるので、実際、潮の動きが魚の活性にどの程度影響があるのか疑問に思う事が良くあります。

 私が狙う魚は、『シーバス・黒鯛・メバル・カサゴ』で、船からエサやルアーで狙います。
 ホームグラウンドである東京港周辺は、普段から余り潮が動かない場所です。

 この為、大潮・小潮回りによる釣果の違いはありません。
 但し、釣果に密接に関わっているのが風向きで、この風のお陰で表層付近の潮が動きます。

 東京港の場合、潮の動きのによる魚の活性は昼と夜とで異なりますので、『昼の釣り』と『夜の釣り』とに分けて説明しましょう。


 結論を先に申し上げると、
 昼の釣りは、潮が全く動かない条件でも釣れるのですが、
 夜の釣りは潮が動かないとお遊び程度の釣果となりますので、『釣れない』との表現が正しいと思います。

 まずは、説明しやすい夜の条件ついて紹介しましょう。
 夜に狙う魚はシーバス・メバル・カサゴです。

■夜の釣り 【シーバス】

 シーバスは潮通しが良く明るい場所をルアーで狙うのですが、潮が動かないと魚の群れが入っていても釣れません。
 しかし、トロトロとでも潮が動いていれば釣れるのです。

 潮回りは大潮から小潮まで釣果に差は無く、ガンガン流れにならない限り良い感じで釣れます。

 一般的に小潮回りならガンガン流れにならないと思いがちですが、実際はその日の条件や風向きでガンガン流れになる事が多々あります。
 逆に大潮回りでも潮が全く動かなかったり、トロトロしか動かないケースも多々ありますので自然とは不思議が一杯です。

 また、この仕事をはじめてわかったのですが、潮の流れる方向により釣果に影響が出る場所が多い事には驚かされました。
 例えば、ある場所にシーバスの群れが入っていると考えて下さい。

 北方向から潮が流れれば良い感じでヒットするのが、北東や東方向から流れると食いが悪くなったり、南方向から流れると全く釣れなくなったりするのです。

 なぜ潮の流れる向きで釣果に影響が出るのかは未だにわかりませんが、狙う場所によっては魚が釣れる向きが決まっているので、高確率でエサを捕食しやすいパターンをシーバスは知っているのではないでしょうか?

 それとも、流れてくるプランクトンの影響など、人間の知る事ができない魚の活性を上げるなんらかの要因があるのかも知れません。

 この様に、潮の流れる向きで釣果に差が出ると言うことは、潮が流れる=魚が釣れる(活性が上がる)の法則は100%の回答では無いと言う事です。

 まあ、経験を重ねる事により、潮の流れ方による釣れるパターン・釣れないパターンを覚える事ができましたので、風向きで潮の流れるスピードや方向を推理し、高確率で釣れそうな場所を選択できるようになりました。



■夜の釣り 【メバル】

 メバル狙いはエビエサを使い、水深3,4mまでの表層付近を落とし込み釣りで狙います。
 釣れる条件・釣れない条件はルアー・シーバスと同じです。

 潮が流れると良い感じで釣れ続きますが、潮が流れないとお遊び程度にしか釣れません。
 また、潮が動かないと、狙うサイズである20〜30cm級が釣れなので大変苦戦します。

 ちなみに、メバルは潮のブツケなど変化のある場所に群れる習性があり、当日のヒットポイントを探すとバカバカと連続ヒットする事が良くあります。

 尚シーバスと同様に、潮の流れるスピードや向きで、食いが良くなったり悪くなったりと状況が刻々と変化しますので、釣れる時は入れ食いになりますが、少し条件が変わるだけでポツポツとしか釣れない状態へ一瞬で変わってしまいます。



■夜の釣り 【カサゴ】

 カサゴ狙いはエビエサや魚の切り身(サンマ・イワシ)を使い、胴付き仕掛で底付近を探ります。

 潮の動きによる釣果の差はそれほど無く、魚が居そうな場所を探し、1箇所で何匹も釣るスタイルとなります。
 もちろん、潮が動いていた方が食いは良いのは確かですが・・・。

 ちなみに、冬場のカサゴは不思議と仲間同士で群れている事が多く、子孫繁栄のハーレム?のためなのか、1〜10mの範囲で集会?を開いている事が多いです。
 この為、群れが溜まっている場所を連続して攻めれば、おのずと釣果がアップします。



◆昼間の釣り

 昼間に狙う魚は、『エサ釣りによるシーバス・黒鯛』と『ルアーによるシーバス』です。

 昼の釣りについては、潮の動きが必要だと思う場合もあれば、全く必要無いと思う場合もあり、正直言って未だに明確な回答はでていません。
 但し、トロトロとゆっくりと潮が流れる条件が最高である事は確かです。

 潮の流れが必要無いと思う理由は、潮が全く動かない条件であっても、エサやルアーに魚が反応し問題無く釣れるからです。

 俗に言う、「潮止まりは釣れない」と言う表現は、昼間の釣りに関しては誤りだと思ってしまいます。

 しかし、食いが悪く、「この場所には魚が居ないのかな〜?」と思っていた矢先、潮が良い感じで動き出し、突然魚の活性が上がりバカバカ釣れる事もあるのです。

 以上により、私の経験では、昼の釣りは、
 「潮が動いていなくてもシーバスと黒鯛は釣れる。」
 「釣れる・釣れないは運しだい」となります。」


 この様な考え方の私ですが、船からの釣りの場合と、堤防や磯から狙う釣りの場合とでは考え方に違いがあります。

 船からの釣りの場合は、上記で述べた通り潮が動かない条件でも釣れるのですが、堤防での短竿を使った黒鯛の落とし込み釣りや、磯でのメジナ釣りなどでは、潮の動いている場所か風のぶつけている場所をメインで狙います。

 「なぜ?」と聞かれると、
 「潮の動かない場所は釣れないから。」
 「風のぶつけている場所は釣れる可能性が高いから。」 と答えます。

 この様に、船からの釣りと堤防や磯からの釣りとでは考え方が矛盾するのです。


 では、潮が動いている条件と、潮が動いていない条件とではどちらが釣果が良いかと言うと、潮が動いている条件の方が釣果が良いのは確かです。

 私の考えでは、船からの釣りの場合、
 潮の動きが魚の活性を上げるから釣れるのでは無く、潮の動きのお陰で船が流れ、狙うポイントを少しずつ移動してくれるから魚との出会いが必然的に増えるのだと私は思っています。

 なので、潮が動かずとも風がそよそよと吹き、船が風で押され動いてくれれば良い釣果に恵まれるのです。

 漁をしていて特に大変な時は、無風+潮が動かずの条件です。
 船が動かないのでオールで漕ぎながら少しずつポイント移動を行ない魚を狙っていきます。
 この方法で問題無くシーバスや黒鯛が釣れてしまうのです。

 尚、このオールで漕ぐ作業が面倒だと言って、船のエンジンをかけたり、ブラックバスの釣りで使うエレキ(エレクトリックモーター)を使ってしまうと、魚は警戒してしまい釣果が悪くなります。



 堤防や磯からの釣りの場合は、潮が動かないと釣れないケースが殆どですので、潮の動きは魚の活性を上げるなんらかの要因があるのは確かだと思います。

 この様に、ホームグラウンドで船から狙う場合と、一般的な堤防や磯から狙う場合とではなぜだか考え方違ってきます。
 しかし、魚が釣れないと”潮が動かないからだ”と決めつけてしまうのも事実。

 それは、TVの番組で潮の動き出した瞬間に魚の活性が上がり、エサを活発に食べ出すシーンを何度か見ており、潮の動きがとても大切である事を知っているからです。

 以上のように、頭の中では潮の動きはとても重要だとわかっていても、潮が動かない条件でも釣れる事が良くあるので、結論を皆さんに説明する事はできません。
 どうかご了承ください。



◆昼間の釣り 私の釣り方は特殊だから釣れる?

 私の行なう船での釣り方は特殊な方法で、水深3〜4mまでしか狙わない表層の釣りがメインとなります。

 エサ釣りは2.4〜2.7mの短竿を使い、船の上から落とし込み釣りを行ないシーバスと黒鯛を狙います。
 ルアーの場合はミノープラグを使い表層のシーバスを狙うスタイルです。

 だからこそ、潮の動きは余り関係無いと言える事であり、一般の船釣りのように、中層から底付近までを狙う釣りには当てはまらない考え方だと思いますのでご注意ください。

 なぜ違うのかと言われても明確な答えが出せませんが、今までの経験で、船から真鯛(活きエサのシャクリ釣り)・タチウオ(エサ釣り)・アジ・イナダ・スミイカ・シーバス(ジグの釣り)を中層から底付近までを狙った際、潮が動いていないと魚が釣れない事が殆どでしたので、私の漁で用いる釣り方は特殊と思って頂いた方が良いと思います。



◆昼間の釣り 風さえ吹けばなぜ問題無く釣れる?

 潮が動かない条件でも、風さえ吹けは良い釣果に恵まれる事が良くあります。
 その理由は、風の影響で発生する表層付近を流れる潮の関係があるからだと思います。

 通常、風が吹くと水面の表層付近の海水が風で押されますので、あたかも潮が流れているように錯覚します。
 しかし、じっくり観察すると表層付近の潮のみが流れていることに気付きます。

 流れる幅は風の強さと釣り場の状況により変化します。
 下記にホームグラウンドの例を記載して見ました。

・風速1〜2mの場合、船は風でゆっくり動くが表層の潮は殆ど動かない状態となる。
 水面下2〜3cm下に浮遊するゴミは全く動いていない状況。

・風速3〜5mの場合は、表層の潮が動き出し、
 水面下10cm〜1.5mぐらいの幅で潮が動き、それより下に浮遊するゴミは止まっている状態となる。

・風速6〜10mの場合は、水面下2mぐらいまでの潮が動く事を確認しているが、それ以上の水深は未確認。
 実際、水面下2m以上の海中にビニールのゴミなどの浮遊物がないと確認できない事と、風で海水が押されてくる距離的な問題もあるので流れる水深はケースバイケースとなります。


 この様に、釣り方によっては風が潮の流れを作り、魚が釣れる条件を生み出す事も多いのです。

 私の想像ですが、表層の流れにより魚のエサとなる生物が流れてくる確率が高くなるので食いが良くなるのかも?
 それとも、この風による潮の流れのお陰で魚の活性が上がるから釣れるのか?
 それとも、プランクトンがより多く流れてくるお陰で活性が上がるのか?
 それとも、船が風で流れる事により、広範囲を短時間で効率良く攻める事ができるから釣れるのか?
 

 もちろん、潮が動いても狙う場所に魚が入っていなければ釣れませんので、漁では、潮の動いている場所を探すのではなく、魚の群れが入っている場所を探す事からスタートします。



◆昼間の釣り 魚を数多く釣る秘訣

 漁師として生活するにはお遊び程度に魚を釣っていたのでは無理ですし、潮が流れない条件でも魚を釣らなければなりません。

 魚の数を釣るために学んだ事は、潮の流れが良いからと言って釣れない場所で粘るのではなく、広範囲をチェックし魚の群れを探したり、少しでも食い気のある魚を見付ける事でした。

 なので、潮の動きに関しては、流れていようが・止まっていようが、どうでも良い事になります。 (^o^)

 まあ、船からの釣りですので広範囲を探り回るのは簡単です。
 しかし、一般の釣り船に乗船している場合はと言うと、ポイント移動は船長の状況判断と野生の感しだい。
 まめな船長は良く移動しますが、その場所から動かずひたすら粘る船長も多いです。

 磯や堤防から狙う場合は大移動できない事が殆どですので、実際は釣れる条件が揃うまでその場で我慢しなければならないと思います。

 尚、ポイントによっては、上げ潮・下げ潮の流れる向きによって釣果が変動する場所があります。
 当日、何処を攻めるかは最近の状況と野生の勘で判断します。
 それは、船からの場合も堤防や磯の場合も一緒です。
 
 簡単にまとめると、東京港の場合、基本となるのは潮の流れでは無く風の向きと強さ、そして魚の群れを探す事なのです。


 最後に
 最終的に釣果を左右するのは釣り人の”運”しだいと言う事です。
 日頃から、大自然の恵みに感謝する気持ちを忘れず生活していれば、皆さんにも”幸運”に恵まれるのではないでしょか。

 私は宗教など信じない人間ですが、魚が釣れない時は、「神様、どうか私にお恵みを!」とつい言葉がでてしまいます。(^o^)

 逆に入れ食い状態の時は、
 「海の神様、この潮の流るスピードと向きを、しばらく変えないでください。」
 「風の神様、あと1時間この風をキープして下さい。」などと、船の上で騒いでいます。(^o^)

 END